大切なのは、人間という「生き物」

少しの間、忘れてください。デジタルのことも。自社データの規模も。その素晴らしさをひとことで表現するための用語について考えるのも。パソコンのスクリーンも。モバイルのデバイスも。メガネをかけていないことも。消費者のエンパワメントも。オンラインで顧客エンゲージメントを成功させる革新的な手法も。ソーシャルメディアやコンテンツマーケティングも。ネットワーク作り、「シェア」や「いいね!」も。バイラルメディアの活用も。

代わりに、顧客についてじっくり考えてみましょう。人間という「生き物」について。手にしたデバイスの機能がどんなに高度化しても、人間とは結局、畑をよりよく耕そうとしているだけなのです。

信念、実践、哲学、思考様式、共感の対象は変化したかもしれません。しかしそれは、いつの時代にも起こったことです。社会的相互作用の複雑なメカニズムの中にあっては、変化こそが唯一不変のものなのです。一方、動機と行動は原始的であり、予測可能です。

大切なのは、人間という「生き物」です。手にしたデバイスの機能がどんなに高度化しても、人間とは結局、畑をよりよく耕そうとしているだけなのです。

医療技術の進化によって、かつて女性であった男性と、かつて男性であった女性との間に子どもが生まれる、といったことが可能になったのは確かです。しかし、人間に関する保険業界のデータテンプレートは、(多くの場合)依然として3つしかないのです。1.無力で弱い。2.弱さから来る不安を和らげてくれる安心感を求めている。3.希望を持ち続ける支えを必要としている。

ビッグデータは確かに、人間という生き物について私たちが知りたいすべてのこと、そしてさらにそれ以上のことも教えてくれます。けれど、ソクラテス、シェークスピア、サルトル、フロイトやユングは、センサーなどない時代に、インサイトによってその巨大な名声を確立したのです。

もちろん、デバイスは重要です。いずれはまたデスクトップに縛り付けられることになるのだとしましょう。デスクトップの頭が悪すぎたのだとしましょう。しかし、新時代のデバイスの構想はまだ生まれていないのかもしれませんし、デバイスに支配された未来の人間行動に関する予想は、水晶占いとほとんど変わらないもの、ダイレクトマーケティングの統計作業に役立つとも思えないものということになります。

結局は、お客様が神様なのです。これまでもずっと神様だったのです。

それゆえに、マーケティングの本質を忘れてはならないのです。個人の嗜好の奥にある人間の根本条件と向き合わねばならないのです。顧客のニーズを満たし、不安を和らげ、社会から拒絶されがちな人々を引き受け、ロイヤルティにはリワードで応え、購入までの道のりを助ける明確な情報を提供しましょう。

それが済んだ後で、デジタルのプラグインを導入しましょう。顧客価値を、より一層高めるために。